人工透析のメカニズムと準備事項
透析とは腎不全と呼ばれる病気で悪くなった腎臓の機能の代わりの役割を果たす治療法です。腎臓は左右の腰のあたりに二つある臓器で血液をろ過し、老廃物や毒素を排出する大切な臓器の一つです。
腎臓が機能できなくなると尿として排出していた老廃物や毒素が体内に溜まる事で、むくみや吐き気、頭痛などといった症状を引き起こし、放置しておくと心不全等の深刻な合併症を引き起こします。
日本は透析患者が約34万人といわれる世界でも有数の透析大国で、国民の380人に一人は透析患者と言われていて、末期の腎不全患者の約96%以上の患者がこの血液透析治療を行なっております。当院では様々な治療法の中から患者様の症状やライフスタイルに合わせた治療法をご案内しております。
人工血液透析のしくみ
基本となるHD療法
機能が低下した腎臓の代わりにダイアライザーと呼ばれる人工腎臓を使って腎臓の代わりの役目を果たします。血液透析は英語のHemodialysisの略でHD療法とも呼ばれ、一度体内から血液を取り出しダイアライザーが老廃物などの除去を行い綺麗になった血液を再び患者の体内に戻されます。
血液透析治療を行うにあたり、まずは患者様ご自身の腕に、シャント作成と呼ばれる手術を行います。シャント手術とは動脈と静脈をつなぎ合わせる事で沢山の血液量が確保できる血管を送れるようにする手術です。
シャント手術で作成された血管に取り出し口と戻り口の針を2本刺し、体内から血液を取り出します。取り出した血液中の老廃物や余分な水分を人工腎臓を用いて取り除き、綺麗になった血液は戻り口を通って体内に戻ります。
人工透析は腎臓の機能そのものを回復させる治療ではありません。腎臓移植手術を受けない限りは血液透析は定期的に治療しなくてはならないのです。頻度としては平均して週3回〜、1回の通院で4〜5時間ほどかかります。
透析の為のシャント手術
血液透析を行うには、腕の血管から1分間に約200ml以上もの大量の血液を連続的に体内から取り出す必要があります。大量の血液が動脈から静脈に勢いよく流れるよう患者様ご自身の動脈と静脈を繋ぎ、静脈に流れる血液の量を増加させる為にシャント作成手術を行います。手術部位は基本的には利き腕と反対の前腕部になりますが患者様毎の状態によって最適な部位を選択します。手術は概ね1時間から2時間ほどで終了し、術後2週間ほどで透析治療が可能になります。
※シャント作成手術には大きく分けて以下のように2種類あります。
自己血管内シャント
皮膚の下で動脈と静脈を繋ぐ手術で基本的にはこの方法を第一選択とし、透析治療をうける約90%の方はこの自己血管内シャント手術を行います。
人工血管内シャント
手術箇所の血管が細い等の問題があり、直接動脈と静脈を繋ぐ事ができない場合にはこちらの方法を選択します。静脈と動脈の間を皮膚の浅い箇所に埋め込んだ人工血管で繋ぎ合わせます。自己血管に比べ感染症リスクが高く、また作成したシャントの寿命が短く2〜3年後には交換が必要になるというデメリットがあります。
※いずれの方法でもシャントを清潔に保つ、負荷をかけない等の管理を行いシャントを長持ちさせるよう患者様ご自身の意識が大切です。
HDF(血液ろ過透析)の仕組み
従来のHD(血液透析)治療にろ過を加えた治療法です。透析療法にはHD(血液透析)、HF(血液ろ過)、HDF(血液ろ過透析)の3つがあります。
小さな物質除去に優れた血液透析(HD)、と大きな物質除去に優れている血液濾過(HF)を合わせて2つの長所を取り入れた治療法です。
ろ過用の補充液を加えながらろ過の力をより多くかけ、血液をろ過する量を増やす事ができます。